「東名高速バス酒酔い運転事件の教訓から」

〜 職場と地域から飲酒運転をなくすために 〜

                               2006、7、23

                                    山村陽一


1、東名高速道酒酔い運転の衝撃 〜中央道酒酔い事件の1年後〜

・ 業界あげての防止対策実施

・ アルコール検知器で未然に防いだ事例2件

・ 東名高速道の飲酒運転へ至る運転手の飲酒状況



2、へし折られた天狗の鼻

・ 事故防止のために国鉄に採用された私

・ 事故の全責任は私にある

・ 私の間違いは、どこにあったか(中途半端な知識、関係団体の無知)



3、交通職場にある他人事意識と忘れたい心理

・ 運転手、現場管理者の他人事意識(俺は大丈夫、ウチは大丈夫)

・ 事故担当者、経営幹部の一段落意識(他にやらねばならぬことがある)

・ 関係者の忘れたい心理とは?



4、酒に寛容な組織風土と伝統的な飲酒文化

・ ストレス解消、変形勤務後の入眠、に必要な飲酒との思い込み

・ 本音の話し合い、歓・送迎、祝い事には、不可欠な飲酒の慣習・儀式

・ 酒に強く乱れない者がリーダーシップをとっている組織、かばいあいの美徳



5、プレアルコール依存症の理解 〜医学的診断(強迫的飲酒・離脱症状)より幅広く〜

・ 1〜2合では物足りない、勧められると断れない、毎日飲みたい、飲む理由を作る

・ 飲む機会にしっかり飲む、味より酔いを楽しむ、翌日は休みをとって会合に出る

・ 糖尿病、高血圧、肝臓疾患があるのに禁酒せず節酒ですませる



6、水際作戦から抜本的な対策へ

・ 会合の車厳禁、飲んだ人は送る、運転当番を作る、家庭での注意喚起(正常者対策)

・ 飲めない人、飲ませてはいけない人の理解徹底、酒無しで楽しめる会合の工夫

・ アルコール依存症恐ろしさの啓蒙、依存症者の早期発見と介入・治療・回復の実践

・ 問題飲酒者への予防プログラムの実施(飲酒行動を変容⇒生活を改善する教育試み)

・ 飲酒問題を相談できるキイパーソンの配置(産業医、保健師、安全衛生担当者)



7、日常的な管理の充実とは

・ 突発休、遅刻、勤務変更、勤務成績の変動などと飲酒機会とのチェック

・ 健康管理の観点からのチェック

・ 小さな事故の丁寧な分析



8、飲酒運転防止のネットワークに大切な結び役(キイパーソン)

・ 組織責任者、人事・厚生部門、産業医との連絡体制の結び役

・ 関係者の共通認識、専門技術の結集、施策の継続実行意欲向上策を推進

・ 部外のアルコール関連問題対策団体との連携



9、すぐ取り組める身近な実践

・ 会合は酒飲みが主流?から飲めない、飲ませてはいけない人も主役へ

・ 味わうのみ方の奨励、ノンアルコール飲料の充実、酒無しで美味しい食事店推薦

・ 酒なしでも本音のでる会合、ワークショップの研究



10、 トップの姿勢と組織の社会的責任

・ 組織風土を変えるのも、防止対策を継続するのもトップの姿勢

・ 依存症(予備軍を含む)を発症させ、進行させ、飲酒運転をさせるのは組織

・ 飲んで事故はクビを知りつつ飲酒運転するのが依存症者。依存症者の放逐は無責任

(飲んだら車に乗るな、の鍵を解くのが酒、飲まなければ落ち着かない、飲まずにいられない、心と体が欲求する状態が依存症、クビ覚悟で飲むのではなく、うまくやれると飲むのが依存症、嘘をつき隠れてまで飲むのが依存症、それを作り・進行・再発させるのが組織風土。飲まない人・酒好き・家族・友人・上司・医師・社会にも責任あり)



(結論)

 大量に生産される酒が、安く手軽に飲め、欲望の肥大化が進む現代社会は、同時に車が生活に不可欠な高度自動車社会でもある。飲酒運転惹起者は、このような社会で、酒の自己コントロールを失った弱者とみなすことができる。交通道徳の教育や自覚の促しだけでは、とても飲酒運転の撲滅は不可能だ。予防をふくめたアルコール依存症対策と現代社会にふさわしい飲酒ルールの確立や飲酒文化の創造が必要である。このため、社会のあらゆる分野で、他人事とせず、その場に適切な飲酒運転防止体制と新しい飲酒文化を構築すべきである。家庭で、地域で、そして職場で、創意と工夫をこらした飲酒行動変革 ⇒節度ある飲酒の充実した生活への改善努力をすすめたい。